ノスタルジア

恩田陸さんの小説と出会ったのは高校生のときだったかと思う。本屋さんで平積みになっていた「三月は深き紅の淵を」という小説のあらすじを見て、「謎の本を巡る物語」という文章にとても心惹かれ、どきどきしながらレジへと持っていった。

謎には明快なる答えがなくてはならない、とする人にはこの小説は合わないだろう。これは問い/もしくは謎を投げかけ、そして答えを示す寸前で物語の幕は閉じるという感じの小説だからだ。

恩田陸さんの小説は全体的にそんな感じだ。謎を投げて、回収しても答えはおしえないよ、自分で考えなよ、そうしたらおもしろいよ、とでも言うように終焉を迎える。

わたしはとても好きだ。ネクロポリスの終わり方はちょっとぞっとしたし、六番目の小夜子には青春の輝きを見て切なくなった。夜のピクニックも、高校生の爽やかさを存分に描いていたように思う(映画は未見)。

ノスタルジーの魔術師という異名をとるほどの、恩田陸さん。わたしはどこか切なさをかかえたその世界の虜になっていた。

興味のある方はご一読を。

三月は深き紅の淵を (講談社文庫) | 恩田 陸 | 本 | Amazon.co.jp